
生体リズムから見た植物性抗ガン物質(ファイトケミカル)の組み合わせと時間差攻撃
医療法人社団博心厚生会九段クリニック理事長 阿部博幸先生
近代医学は進んだとはいえ、ことガン医療に関しては未だ満足のいく成果が得られたとは言い難く、現在の治療の基本となっている「手術、化学製剤の投与、放射線照射」を支える形で、サプリメントによる新しい治療が要望されている。
そうした趨勢にあって経験的にも研究実績の面からも広く期待されているサプリメントの機能は@ガンの宿主であるヒトの免疫力の賦活、Aガンの血管新生の阻害、Bガン細胞のアポトーシス誘導―――であるが、我々はファイトケミカルの面からこの3つの機能に適合する素材を見出した。すなわち免疫賦活としてアガリスク菌糸体(Agaricus)、アポトーシス誘導を目標に沖縄モズク由来フコイダン(Fucoidan)、血管新生抑制を可能にする秋ウコン(Turmeric)である。
ガンの抑制を目標にすれば当然いくつもの課題が見えてくるが、第1点として「単一のサプリメントでの攻略は困難である」ということが挙げられる。それぞれのファイトケミカルの特長を考慮して組み合わせることによって、複雑な側面を持つガンへの有効性が何倍にも高まることが期待される。我々はその目的にそって今述べた3種類を選び、その頭文字を使って「TAF=タフ」と名付けて検証を重ねてきた。
第2点は、効果を得るのに必要な量を摂取することである。実際的な制約も多々あるが、研究成果を生かして実績を上げていく努力も必要であろう。量的に多くなれば、飲みやすくする工夫も求められるが、今日これから研究発表がある「ナノテクの活用」ということもその一つであろう。
第3点として、ファイトケミカルの効能を最大限に引き出すためには、生体のサーカンディアンリズムやガン細胞の生物学的特性を考慮して「適切な時間帯に摂取する」という工夫も重要である。
人体の生理機能にはホルモン分泌など「日周リズム」があり、免疫細胞の活性も時間的な影響を受けることが知られている。同じく「ガンは夜育つ」という言葉通りに、ガン細胞も平均的に夜間を中心にDNA合成が盛んになる。そこで、こうした現象を逆手にとって適切なサプリメントを適切な時間帯に摂取して効果を高めようとするのが、我々の提唱してきた「時間差療法」である。
ファイトケミカル研究会では、
1. 体が始動期にある午前中に、ガン細胞の血管新生を抑制して転移を抑える「T=秋ウコンエキス」
2. 体は活動態勢にありながら、免疫細胞が減少傾向を示す午後に、免疫賦活能が高く増殖抑制作用を示す「A=アガリスク菌糸体エキス」
3. ガン細胞は夜間に成長しやすいので、寝る前にアポトーシス誘導能の高い「F=フコイダン」
――――というように「T・A・F」の順に「朝・昼・夜」と摂取することが良いと考えており、その実証的な研究も進めている。
今回はTAFを用いて改善を見た症例をスライドを交えて紹介するが、標準療法と併用またはその前後に用いて治療実績を高めているNK細胞療法のように、これからの医療現場でファイトケミカルの可能性が正当に認識されていく一助になることを期待したい。
