主な研究発表内容
HOME > 主な研究発表内容 > 抗ガン性植物物質の特性について

抗ガン性植物物質の特性について

熊本県立大学環境共生学部環境共生学科栄養指導研究室教授 奥田拓道先生

人間には誰でもガンに対する抵抗力が存在する。NK細胞に代表される免疫力や、ガン周囲の血管新生の阻止作用などである。私は、このような人体に備わったガンに対する抵抗力を強めるものこそ、真の抗ガン剤であると信じて、アガリスク、フコイダン、ウコン等の研究を行っているので、その成果の一端を紹介することにしたい。

発ガン物質は現在までに百数十種が見出され、いずれも細胞分裂時に働く物質であるが、これらは正常細胞内にもあるもので、それ自体に異常性はない。つまりガンは、人間の中の正常な細胞がなるのであって、感染細胞ではない。感染細胞なら人間の細胞にはない特殊な細胞壁などがあるが、そこに孔をあけるように働く酵素の合成を促進させるようなものが、求めている抗生物質になる。しかし、ガン細胞には、正常な細胞と異なる物質は存在せず、ある物質の量的な差が存在するだけで質的な差はない。したがって抗生物質を扱うような方法では、絶対に抗ガン物質を見つけることはできない。
言い換えれば現行の抗ガン剤は、いずれもガン細胞のDNA合成を阻止する物質であるため、それは同時に正常な細胞である白血球とか腸管の上皮細胞のような、分裂の盛んな正常細胞にも被害を与えるので、大小さまざまな副作用が避けがたいのである。

講演のスライドより

今や世界中で、抗生物質のような抗ガン剤の発見競争が続けられているが、ガンと宿主の関係を考えないと、間違った方向へ進むことになる。ガン細胞は宿主に対して、痩せさせたり、貧血を起こさせたり、免疫能を低下させるような毒素を出すが、これらもまた人体の正常細胞にも存在するもので、われわれが発見した痩せさせる毒素―トキソホルモンは、物質的にはアルブミンであった。
だが、正常なアルブミンをいくら投与しても痩せない。ただガン細胞が出すアルブミンだけが痩せさせる作用を見せるのであるが、これはガン細胞の出すアルブミンには、たくさんの糖が付くことに起因する。そうなるとアルブミンの中にあったペプチドが分子の表面に出てきて、このペプチドが脂肪の分解を促進させ、満腹中枢を刺激して食欲を失わせるために、痩せるという結果が生ずるのである。

一方、宿主の方では、リンパ球がガン細胞と正常細胞を見分けて、選択的にガン細胞を殺そうとする。われわれが今希望を託している植物由来の抗ガン物質は、このガン細胞への抵抗力を高める働きを見せることに特色がある。アガリスクやウコンやモズクなどの成分をガン細胞へ直接振り掛けても、ガン細胞は死ぬことはない。それらは宿主のガン細胞に対する抵抗力を強めるものであるから、分子構造も抗ガン剤のような妙な構造をしておらず、われわれがごく一般的に知っている物質ばかりである。
そのような物質が抗ガン作用を見せる事実を、アガリスク、ウコン、モズク由来フコイダンについてわれわれは実験的に確認したので、その結果をご報告したい。いずれも異なった性質を持つ移植ガン細胞に対して、有意に抗ガン作用を示したのであるが、とくにここで強調しておくべきことは、体重の増減にも、脾臓や胸腺の重量への影響もなく、いずれにも副作用が見られないという点である。
また、これら植物由来物質には、ガン細胞の周辺で進む血管新生を阻止するという抗ガン作用がある点も貴重であり、われわれはその実例をアガリスクに含まれているエルゴステロールによって確認したが、さらにアガリスクの血管新生阻害にはピログルタミン酸も関与し、この物質はNK細胞の活性化にも寄与することを見出している。
あるいはモズク由来のフコイダンに関しては、免疫細胞を活性化する事実を確認している。経口摂取したあと腸管から吸収されなくとも、体全体の免疫細胞の60%以上が常駐する腸管内を特定成分の巨大分子が通過するだけで、免疫細胞の抗腫瘍活性が格段に向上するのである。
これまで見てきたように植物由来の機能成分は、非常に巧妙かつ選択的に抗ガン作用を発揮し、しかも副作用がないという点に、今後の期待が膨らむのである。

ページ上部へ