
ナノテクを利用したサプリメントの開発について
株式会社沖縄発酵化学研究開発部研究員 高橋 誠
図1 胃酸処理試験における
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図2 膵液処理試験における
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最近は健康意識の高まりから「体に良い食品」が望まれているが、一般的にこれらの有効成分は、分子サイズが非常に大きい、あるいは水に溶けにくいといった性質を持つため、目的とする有効成分が体に吸収されにくいという問題があった。
このような現状を打開する一案として、効率の改善を目的に開発した「ナノカプセル」の機能性について述べる。
ナノカプセルは、カプセル状の構造をした非常に小さな「人口の膜」で、リンパ脂質を主成分とするリポソーム(脂質膜)である。リポソームはその構造上、膜の内部に親水成分および親油成分を封入できるため、近年は化学物質のキャリア(吸収促進剤)として、医薬・化粧品分野でも利用されている。
我々はこのナノカプセル技術を食品に応用することで、食品成分の吸収性向上、薬効成分の胃腸内環境における保護作用、さらに呈味――味や匂いの改善などの作用が期待できると考えて研究開発に取り組んできた。
そのサプリメント(高機能健康食品)への応用の一例が、「秋ウコンエキス内包ナノカプセル」である。秋ウコンの有効成分であるクルクミンは、親水性に乏しいため吸収性が懸念されてきたが、ナノカプセル化によってそれが改善されることが期待でき、同時に胃酸および膵液処理に対しても、保護作用が向上するのことが確認できた。また「アガリクス菌子体(70%EtOH抽出)エキス内包ナノカプセル」の抗腫瘍効果の改善試験をヒト白血病細胞および担癌マウスを用いて行ったので、それらの結果をご報告する。
ちなみに「ナノ nano」は大きさの単位で、ミリは1000分の1、ミクロは100万分の1であるが、ナノはその1000分の1――つまり10億分の1を表す。インフルエンザウイルスの大きさは約100ナノメートルであるが、我々が完成させた「秋ウコン内包ナノカプセル」は体内吸収に必要な100〜500ナノメートルに調整されており、電子顕微鏡でやっと確認できる大きさである。
そしてこの極端な「小ささ」によって、きわめて少ない摂取量で大きな効果をもたらすことが期待されるのである。
一方、キノコ類やフコイダンなどの抗腫瘍物質である
-グルカンは、高分子であるために腸管から吸収されないが、それが腸管壁を通過する過程で、そこに常在する免疫細胞を刺激することで活性化を促進すると考えられてきた。しかし最近では、腸管に分布するM細胞が
-グルカンの一部を取り込むことによって腸管免疫が働くと考えられるようになった。
この場合、取り込まれるサイズは500ナノメートル以下であるが、
-グルカンなどはその構造上、腸管内での会合によって互いに凝集し巨大化しやすく、吸収を一層妨げる。そこで従来は機械的、または酵素による低分子化が図られていたが、その際の成分の変化という懸念もナノカプセル化によれば解決でき、同時に会合・凝集を阻害するため、M細胞への取り組みの改善が期待できるのである。
また、ナノカプセル化は「良薬口に苦し」という呈味の問題、あるいは親油性成分なら油に溶かして摂らなくてはならないという問題なども改善できる。
カプセル化の効果と、その検証
- ナノカプセルは食品エキスを消化液から保護する
秋ウコンの主要成分であるクルクミンが、胃酸および膵液によってどれほど影響を受けるかを試験管内で実験したところ、図2に示すように特に膵液では残存率が55%まで落ちたのに対し、ナノカプセル化した場合にはほとんど影響されなかった。
こうした利点に加えて、ナノカプセルは水溶性が高く分散度も高いので、カプセル内に納めた有効成分の生体への吸収効率が格段に改善されることが期待される - アガリクス菌子体エキスのもつ抗腫瘍活性への影響
アガリクス菌子体エキスにナノカプセル処理を施すことによる効果については、まずヒト由来腫瘍細胞株(HL-60、K562、MOLT4、MT2)の増殖反応に対する影響を調べたが、その結果は図3に示したとおりナノカプセル処理により、高い増殖抑制効果をしました。 - アガリクス菌子体エキス内包カプセルを担癌マウスに使う
ナノカプセル化による腸管吸収の改善が実際にどれほど行われるかを検証する目的で、ザルコーマ180を移植した担癌マウスに未処理のアガリクス菌子体エキス、およびナノカプセル処理をしたものを20日間経口投与して腫瘍体積を比較した。一般に投与量が7グラムほどで効果が発言するといわれているが、今回の実験ではその6分の1の量(1.2g/日/kg)の投与で、図4に見るとおり明らかな有意差を示した。
ナノカプセル化によって、有効成分の吸収が促進されたものと考えることができる。
ナノカプセル化に寄せる期待
図5 健康食品のナノカプセル化によって期待される ![]() |
機能性を追及した健康食品には、あたかも良薬のように苦い、匂いが強いなど、摂取しにくい要素があるが、我々の試みたナノカプセル化はそうした強い刺激性をカプセル内に封じ込め、呈味が向上して扱いやすくすることが明らかとなった。
その結果、その食品を摂取する目的が達成しやすくなるとともに、カプセル化によってエキス成分を胃酸や膵液の消化作用から守り、ナノ化処理によってエキス成分の腸管吸収が高まることから機能性(効果)の向上、あるいは逆に摂取量の減量を実現することも可能になることが期待されるのである。

